民俗芸能学会設立の趣意 [2020/05/23 更新]
わが国の民俗には、世界に比類のない豊かな芸能文化の伝承が見られます。民俗の芸能は、生活と信仰のなかで、人々の祈りの手立てとなり、感謝のしるしとなり、喜びの表現となってきました。そこには、都市の舞台芸能には見られぬ、独自の、しかも水準の高い表現の世界が築かれています。
この民俗芸能に優れた価値が見出され、一国の文化の中に位置づけられたのは、大正年間のことでした。 以来、〈郷土舞踊と民謡の会〉にはじまって現在の全国民俗芸能大会に至る、知られざる民俗芸能の発掘・紹介と、雑誌『民俗芸術』以来の誌面に寄せられた報告・論考とが積み重ねられ、我々はすでに民俗芸能の研究に五十余年の歴史を持っています。 この研究史をふり返ってみますと、その中核となったのは、民俗芸術の会であり、民俗芸能の会でありました。 フィールドに対象を求める研究者が情報を交換する場として、また自已の研究を持ち寄って仲間から啓発を受ける場として、これらの会の寄与したところは大なるものがありました。 その後、研究の成熟に伴って学会の設立を望む声が起り、〈日本民俗芸能学会〉が発足しましたが、残念ながら軌道に乗せるに至らず現在に至りました。 今ここで改めて、その実現への熱意を集め、名も〈民俗芸能学会〉として全国組織の学会を設立し、その研究の成果を問うことになりました。
しかしながら、民俗芸能の研究は、いまだその対象と方法において一つの独立した学問としての体裁を備えているとはいえない現状にあります。 その現状に対しては、研究の稔りをもって向う以外にはありません。我々の学会は、民俗芸能の研究を志す者の交流と研鑽の場として瑞々しい議論を求めるとともに、民俗芸能の伝承者と一緒にその生き方をともに考えていこうとするものです。
芸能としての民俗芸能を研究する人々をはじめ、民俗学、宗教学、社会学、文化人類学など、隣接諸科学からの多くの参加を得て、本学会を設立したいと考えております。
昭和五十九年十一月
お問い合わせ先
- 民俗芸能学会事務局(毎週火曜日 午後1時~4時)
- 〒169-8050 東京都新宿区西早稲田1-6-1 早稲田大学演劇博物館内 [地図]
- 電話:03-3208-0325(直通)
- Mail:office[at]minzokugeino.com (* [at] を @ に換えてお送り下さい。)