令和元年度「本田安次賞」選考委員会報告[2020/05/23 更新]
「本田安次賞奨励賞」:該当なし
「本田安次賞特別賞」: 和田 修 氏
【選定理由】
和田 修 氏の長年に亘る「対馬の盆踊り」の研究と「厳原の盆踊り」「対馬の盆踊り」の論考に対し、高く評価いたしました。
対馬の盆踊りは櫓を組み円陣で踊る盆踊りとは異なり、二列横隊を組んで踊るもので、特異なものとされましたが、詳細な報告と文書により、円陣を組む輪踊りとは別のものでより古い風流踊りの形態ではないかと位置づけています。その意味で盆踊りではなく盆の風流踊りという語を使っています。具体的に「御卵塔風流」卵塔は卵塔墓の卵塔を書きます。文明18年(1486年)対馬藩主宋(そう)氏の藩士による風流と特権商人による六十人踊りすなわち町方踊りに淵源し、それが田舎踊りとして変化していく様子を追っています。前者が謡曲の行列風流なのに対し、後者は近世歌謡の踊り風流で近世初頭の様子を残していると論じています。御卵塔風流は江戸時代に衰退してしまいますが、町方風流は村落の風流として棒術や奴振りを伴って様々に変化して対馬盆踊りのバリエーションとして現在に伝承されています。この対馬の例をもとに西日本各地の盆の風流踊りを位置づけています。
芸能史では風流踊りと盆踊りの関係は不分明な点が多かった部分でありますが、和田氏の一連の研究によって一石が投じられたと言えましょう。この分野でのより一層の研究の発展を期待します。
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